外国人男性と結婚するインドネシア人女性への差別撤廃を目指し、昨年八月に施行された新国籍法の細則が決まり、実際の申請手続きが開始された。二十一歳までの二重国籍が認められるようになったが、施行前に生まれた日本人男性とインドネシア人女性の子どもがインドネシア国籍を取得した場合、日本の国籍法に基づき、日本国籍は喪失してしまう。在ジャカルタ日本総領事館は「法改正による国籍取得は慎重に」と呼び掛けている。
新国籍法では、オランダ植民地時代の旧法(一九五八年法律第六二号)が全面的に改定された。父系血統主義から両系主義に変わったことで、父親が外国人でも二十一歳までの二重国籍を認め、子どもが国籍を選択する自由を保証した。
このため、これまで日本人男性とインドネシア人女性の間に生まれた子どもは日本国籍となり、インドネシア国籍を取得することはできなかったが、今後は自動的にインドネシア国籍が与えられ、日本にも出生後三カ月以内に留保届を出すことで二重国籍が認められることになった。
しかし、日本では国籍法第十一条で「自分の意思で外国籍を取得した場合は、日本国籍を喪失する」と規定されているため、施行日の昨年八月一日以前にインドネシアで生まれ、すでに日本国籍を取得している子どもは、新たにインドネシア国籍を取得した場合、日本国籍は喪失する。
在ジャカルタ日本総領事館の担当者によると、他国で以前、この規定を知らずに外国籍を取得し、日本国籍を再取得しようとした例があったが、認められなかったという。
インドネシア人女性の妻との間に生まれた二歳の子どもを持つ邦人男性は「インドネシアの法律が改正され、子どもにインドネシア国籍を取らせようと思ったが、日本の国籍を喪失することになると知り、あきらめた」と語る。 法改正に関する問い合わせが相次いだため、日本総領事館は、今年一月に国籍法改正に伴うお知らせを出し、新たにインドネシア国籍を取得する場合の注意を呼び掛けた。 日本国籍を喪失した場合、日本に生活の本拠となる住所をおいた上で、帰化の申請をしなければ、再び日本国籍を取得することはできないため、国籍選択は慎重に行ってほしいとしている。
また、日本総領事館はこのほどインドネシア法務・人権省行政法局と協議し、手続き上の不明瞭な点などを確認した。 法務・人権省法務行政総局行政法局のアシャリ・シハブディン行政法部長は「インドネシア側としては、施行前に生まれたとしても、申請者はすべて受理し、国籍を与える。年齢制限を設けずに重国籍を認めている国もあり、申請者は父親の出身国の規定に沿って対応してほしい」と述べた。 施行後に生まれた子どもは、これまでインドネシア人男性と日本人女性の間に生まれた子どもと同様、出生日から三カ月以内に日本国籍を留保する意思表示をした出生届を提出すれば、二十一歳まで二重国籍とすることができる。出生から三カ月を過ぎても留保届を出していない子どもは、インドネシア国籍となるため、注意が必要だ。
■申請料は50万ルピア
新国籍法は昨年八月に施行されたものの、申請手数料などに関する運用細則が決まっておらず、実際の手続きが進んでいなかった。しかし、今年に入り、国籍取得に関する政令(二〇〇七年第二号)が発布され、申請手数料も五十万ルピアに決まった。
アシャリ部長は「ハミッド・アワルディン法務・人権相が外国国籍の子どもにインドネシアのパスポートを手渡すイベントを実施するなど周知活動を実施、これに伴い、申請書類は受理してきたが、手続きを進められない状態が続いていた」と話す。
インドネシア国籍を取得すると、宣誓供述書が発行される。昨年十一月にインドネシア国内で子どもが生まれ、二重国籍の申請をした邦人男性は「宣誓供述書はカードとして発行され、日本のパスポートにホチキスで止められた。空港の入管でこれを提示すれば、二重国籍取得者として扱われ、ビザの有無を問われることがなくなる」と話した。
(2007年03月03日付 じゃかるた新聞))
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