第7回「漫画のsisi、生島尚美です」
▲現在「ウブド日本語図書館」の蔵書は2,000冊を超え、子供たちの人気のスポットになっている。
私は現在、会社の敷地内に「ウブド日本語図書室」というものを作って運営しているんですが、sisi1号店の時からすでにその兆しはありました。私の趣味は「読書と映画鑑賞」。日本から少しずつ持ってきていた本、バリに遊びにやって来る友人たちが置いていってくれた本などをお店に並べていました。実はsisi1号店、お店の半分はショップではなかったのです。
広いお店を持て余した、というのもあるのですが(今となればそんなに広くない、4メートルx8メートルなのですが)「商談などがあるかもね!」とバカな私は意気揚々とテーブルをひとつ置いてお座敷を作り、その横に本棚を用意していたのです。ちなみにこのテーブルはバリの友人が「麻雀のような何か用のテーブル。古くて捨てるそうだからもらって来た」という代物でした。それにテーブルクロスをかけたなんともチープな雰囲気を、いや、庶民的な雰囲気を醸し出していました。
さて、その本棚に少しずつ本が増えていき、漫画好きの私のために「実家にある、処分しなくてはならなかった『北斗の拳』全部持って来た!」と自慢げに言う日本からやって来た男友達。「『うる星やつら』全巻を日本から運ぶなんて人は私ぐらいじゃない?」なんて泣けるほどうれしいことを言ってくれる友だちも。
そんな調子で悪のりした日本の友人たちから漫画を中心としてたくさんの本が集まり、最終的には5年で700冊ほどが集まりました。(後に「sisi?あぁ、あの漫画喫茶ね」と言われる事件(?)が起きるのですが、)当時のウブド、小説などは和食屋さんやゲストハウスにちょこっとあったぐらい。いくつもの漫画が全巻ずらり、とならぶなんて場所はうちぐらい。sisiにバッグを買うお客さまは来ないままでしたが、いつの間にか在住者やバックパッカーたちが来始めて下さっていました。
彼らは自転車やバイクに乗っているので、中央から離れた私のお店にも足を運んでくれる。面白い事に当時一杯3000ルピアのバリコピ(お菓子付き)を頼めば何時間でも本や漫画が読めるお店、としてsisiはまず認知され始めました。
そんな彼らがバリを離れる時に「安いコーヒーで本当に何度も利用させてもらった、ありがとう。尚美さんの話も面白いし! お礼も兼ねてお母さんの(時には彼女の)お土産にひとつぐらいバッグ買って行こうかな?」とバッグを買ってくれることが時々ありました。
さらに在住者さんが「いつも行ってる漫画のお店、そう言えばバッグを売っていた。本を読むだけなら悪いし、友だち(家族)が来たら連れて行ってあげようかな」なんてお気持ちで人を連れて来て下さるようになりました。
のちに少しずつ「バッグのお店”sisi”」としてちょっと噂になり始め、「どこにあるか分からない。わざわざ探すまでには至らないけれど」という人を、「そこ知ってるよ! 連れていってあげる」と、在住者さんや長期滞在者さんたちが案内してくれるようにもなったのです。インターネットで何かを検索する、なんてまだまだ誰もしていなかった時代でしたから、これは本当に助かりました。
「ここ掘れワンワン」のわんこのごとく、本が私を助けてくれた訳です。
<つづく>
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