城田実さんコラム第19回「ゴム時間」を考える (メルマガvol.36より転載) インドネシアで生活経験のある日本人が日本との違いで最も戸惑うことのひとつは、やはり時間への感覚の違い、ハッキリ言えばインドネシア人の時間に対するルーズさではないだろうか。この場で改めて取り上げるのも気が引けるほど、多くの人の体験がさまざまな媒体で綴られている。ラバータイム(時間が伸び縮みする「ゴムの時間」)はインドネシアの代名詞にすらなっている。 私の最初のインドネシア経験は1970年代の中部ジャワだったが、1日の時間は朝、昼、晩の3区分より細かく区切らない方が身のためだ、と悟るまでにイライラと無駄なあがきをした記憶がある。 それでも大学でのセミナーだか何だかの会合で、100人以上の大人が1時間以上も待たされた時など、出席者全体の...22Nov2017城田 実「インドネシア生々流転」
城田実さんコラム第18回「 国軍から見るインドネシア」 (メルマガvol.34より転載) 先月は話題が豊富だった。10月の「時の人」を選ぶとしたら誰だろうか。ジャカルタ州知事に就任したアニス・バスウェダン氏がやはり一番人気だろうか。大統領就任3年を迎え依然として国民満足度が7割を超えるジョコウィ氏も堂々たる有力候補だ。 意表を突いてガトット国軍司令官はどうだろうか。個人的にはこの人を推してみたい気がする。去年から耳目を集める言動がテレビや新聞で頻繁に話題になっている。そもそも国軍司令官という立場の人間がこんなに目立って大丈夫なんだろうかと心配になるくらいだ。ちょっと振り返ってみよう。 昨年の12月に、当時のアホック知事が宗教を侮辱したとイスラム団体が糾弾して行った大規模な抗議集会では、ジョコウィ大統領が急遽デモ隊の前に...22Nov2017城田 実「インドネシア生々流転」
城田実さんコラム第17回「 ゴルカルと政治の季節」 (メルマガvol.33より転載) 代表的な日刊紙であるコンパス紙で「ゴルカル党の支持率、7.1%に低下」という記事を読んで、スハルト政権時代に同党の議員らと多少の交流を持った経験を思い返しながら、改めて時代の変化を感じた。しかし同党は今も政権の支柱であり政局の重要プレーヤーであるので、その動向は感傷を排してしっかり見守らないといけないのだろう。 支持率急落の報道以降、ゴルカル党は大きく動揺している。百戦錬磨の幹部党員を多く抱えた老舗の政党だが、政治の季節に入ったこの時期に、支持率が前回総選挙の得票率14.7%すらを大きく下回ってわずか7.1%にまで落ち込んだとなると、さすがに衝撃は大きかったようである。執行部がただちに調査委員会を設置して対応を検討させたところにも...05Nov2017城田 実「インドネシア生々流転」
城田実さんコラム第16回「ムルデカ」に込められた意味 (メルマガvol.31より転載) 私の日本での学生生活は70年安保と重なったこともあり、大学のバリケード封鎖や自主講座などの大波に揉まれているうちに、いつの間にか卒業していたような印象がある。それもあって、中部ジャワの大学キャンパス近くの下宿に落ち着いてからは、ちょっと別世界で暮らすような気分だった。 夜、国営のテレビ局からはその日の放送終了となるラユアン・プラウ・クラパだったかインドネシア・プサカだったかの曲が流れ、画面には麗しいインドネシアの映像が映し出される。殺伐とした日本のキャンパスの記憶が新鮮な身としては、理屈抜きにインドネシアの人がうらやましく感じられた。同じ民族の国家に属するということはこういう風にして実感するものなのだろうか、と妙に感心していた。 ...05Nov2017城田 実「インドネシア生々流転」