チレボンは、景色も料理も、これがインドネシアだなって思うような工夫やスパイスが効いていて面白いんです。
港町ならではの開放感と古き良きジャワらしさがあって、すごく居心地の良い街です。
高速が出来たので、ジャカルタから車で3〜4時間ぐらいで行けます。バティックのお買い物がてら、是非、週末にお出かけください。
①「私史上最高」のアヤム・ゴレン
「アヤム・ウンバラン」(Ayam Umbaran)の「umbaran」はジャワ語で「放たれた、リリースされた」という意味。つまり、「放たれた鶏」。チレボンのこの店のアヤム・ゴレンが、「私史上最高」のアヤム・ゴレンである。
長い竹串に、骨の付いたままの肉が刺してある。鶏が見えないほどに、カリカリに揚げたココナッツフレークがたっぷりかかっていて、一見、日本の串揚げ(中味不明)みたいだ。
揚げたて、アツアツの鶏を、もちろん手づかみで食べる。地鶏なので、肉はちょっと硬め。「アツッ、アツッ」と驚く指先にちょっと力を入れて、縦にビーッと裂くと、蒸気のような見えない湯気がふわっと立ち上り、茶色い外見の中から真っ白い身が現れる。色は純白だが、味は隅々まで染み渡っている。
この「味が染み渡っている」所が普通のフライドチキンとは違う、インドネシアのアヤム・ゴレンの特徴だと思う。日本のKFCでフライドチキンを食べると、鶏の皮には「秘伝」といわれるいろんなスパイスの味が濃く染みこんでいるのだが、白い身の方には味がなくて物足りない。濃い味付けの皮と、味のない身との落差が激しい。その点、インドネシアのアヤム・ゴレンは、しっかり下味をつけてから揚げるので、身の隅々まで味が染み渡っている。この香辛料の染み渡らせ具合は店の腕によっても変わるが、「アヤム・ウンバラン」の鶏は、奥の奥まで、ちょっとしょっぱいぐらいに味が染み通っている。
かみごたえのある白い身を裂き、サクサクの黄金色のフレークをたっぷりとまぶして口に入れ、油(フレーク)と鶏肉のコンビネーションを味わうのが至福。
●Ayam Umbaran/Jl. P. Cakrabuana, Kel. Sendang, Kab. Cirebon/Tel : 0853-2031-8713/9:00-21:00/Ayam Kampung Goreng Rp.22,000
②ジャンブラン村のお弁当
「チレボン料理」として最も有名なのは「ナシ・ジャンブラン」(nasi Jamblang)だろうか。Jamblangは、紫色の実のなる「ムラサキフトモモ」という木の名前、と辞書にある。その木の葉で包んだご飯なのかと思ったら、「チレボン近郊のジャンブラン村で発祥したご飯」、というのが起源でした。
ナシ・ジャンブランの発祥は、オランダ植民地時代までさかのぼる*。当時はビニール袋もなかったので、村にたくさんあったチークの木の葉を使い、ご飯、そしてテンペや卵といったおかずを包んだのが始まりだそう。つまり、ジャンブラン村のお弁当。チークの葉は腐敗防止のほかに、ご飯への香り付けにもなった。日本の笹の葉ずし、柿の葉ずしといった感覚か。
葉脈のはっきりした、ちょっとゴワゴワの緑の葉を開く。そこに包まれている、一口サイズとは言わないが、三口サイズぐらいのご飯の周りに、好きなおかずを好きなだけ取り合わせる。このご飯の少量ぶりがナゾなのだが、1個で足りなければ、もう1個、2個、と、追加はできる。
おかずは、港町チレボンらしいシーフードから、肉、卵、野菜など20種類ぐらい。代表的なおかずをいくつか挙げると、ぷっくり膨らんだ小ぶりのイカの墨煮、ワタリガニの卵のペペス(バナナの葉の包み焼き)、塩気の強いイカン・アシン(塩魚)など。
私の好物は、イカの墨煮(cumi hitam、イカのうまみたっぷり)、ジャガ芋のコロッケ(普通のプルクデルより中味が詰まっておらず軽い食感。スナック感覚が強いおかず)、うずら卵のサテ(卵好きなもので)。心のおもむくままに好きなだけ(5〜6種類)おかずを取っても、値段は3万〜4万ルピアぐらい。
おかずはなくなったら終了で、人気のあるおかずはあっという間に売り切れるので、できれば朝、遅くとも昼までには行くべし。
チレボンの「三大ナシ・ジャンブラン」は「マン・ドゥル(ドゥルおじさん)」、「イブ・ヌル(ヌルおばさん)」、「プラブハン(港)」の3軒。チレボン在住の賀集由美子さんのお薦めは、あまり辛くなくて食べやすい「プラブハン」。
*参照 Nasi Jamblang, kuliner Cirebon yang bertahan sejak zaman Belanda
http://www.bbc.com/indonesia/majalah-4047189
●Nasi Jamblang Pelabuhan/Jl. Pasuketan, Panjunan, Lemahwungkuk, Cirebon/ Tel : 0852-9539-2686/6:00-14:30
③チレボンのクリーム麺
チレボンへ行ったら、何が何でもミー・コチュロック(mie koclok)なのだ。
白いスープに白い麺が浸かっている。真っ白で、涼しげな見た目。ゆでて裂いた鶏とバワンゴレンの茶色がアクセント。麺の傍らには、ゆで卵のスライス(注:卵なしだと見かけが寂しすぎるので、卵付きにするのがお薦めです)。
ミー・コチュロックの写真を見た日本の方に質問されて、「ココナッツミルクのクリーム麺で……」と説明したのだが、「どんな味か想像がつかない」と言われた。「チレボンのクリームスパゲティー」などと勝手に呼んでいるこの麺、味を表現するのはなかなか難しい。
特徴は、片栗粉でとろみをつけた、ココナッツミルクのスープ。「どろっ」や「とろっ」とまでは行かず、シャバシャバした液体で、ほんの少し、液体に重みがあると言うか、とろみがついている。
スープをスプーンですくって口に運ぶ時、ほんの少し、独特のココナッツミルクくささがぷんと漂う。そのほかは、非常に食べやすい。ココナッツミルクもそれほど味が強いわけではなく、クセのない味。
1ポーションが1食分には物足りないぐらいに小さいこともあって、「これは一体、何だろう?」と思いながら食べているうちに、あっという間に食べ終わってしまっている。こうしていつも、ミー・コチュロック探求道は道半ばで終わるのだ。<了>
●Mie Koclok Gombang "Pak Rasita"/Jl. Desa Gombang, Gombang, Plumbon, Cirebon/Tel : 0852-9544-4848/10:00–19:00/Mie original Rp.10,000、卵付きRp. 12,000
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