池田華子さん「インドネシアの丸かじり」第4回「ジャムーを丸かじり」


ジャムー(jamu)と言うと、どんより濁った黄土色の液体が「きれいなんだか?」という瓶に詰められて、コップ売りされている情景が目に浮かぶ。色は、さまざまな種類の黄色や赤褐色、または濁った白。手作りジャムー入りの瓶を背負って売り歩くのは、「ヤクルトおばさん」ならぬ「ジャムーおばさん」だ。


 ジャカルタに来たばかりのころ(約20年前)、道を歩いているジャムーおばさんをよく見かけた。ビルのセキュリティー、通勤途中の人らが、気軽に買って立ち飲みしていた。ある朝、出社の途中でちょうどジャムーおばさんに会ったので、あれこれ話を聞いた後、コップ1杯のジャムーを買って「ぐいっ」と飲み干した。味はよく覚えていないが、おいしくはなかった。

 一緒にいた同僚記者も「飲んだことがない」と言うので、やや強引に勧めた。その記者は、ややイヤイヤながら卵入りのを飲んだものの、会社に着いてから「気分が悪くなった」と言って、ソファで休んでいた。その後、「池田さん、よく飲みますね。普通、飲みませんよ」と言われた。

 その後、ジャムーおばさんの自宅でジャムーを作っているところを取材したが、確かに、あまり衛生的とも言えない環境だった。

 「不衛生」で「まずい」というのが、昔のジャムーのイメージだった。私も取材後、ジャムーはほとんど飲んでいない。


 数年前に肩が痛くて上がらなくなり、インドネシアの伝統治療師の所へ通ったことがある。施術後に、ビニール袋入りのジャムーを出された。「毎日、朝晩2回、飲め」という指示だったが、甘ったるさがなんとも苦手だった。半分ぐらいは飲まずに捨てたのだが、次に行った時に、倍量のジャムーを出されたのにはビビった。

 今では、衛生的なボトル入りも、飲みやすいカプセルまである。はやりの「コールド・プレス・ジュース」のブランドが、ジャムーのラインナップを始めているぐらいだ。



 今回のコロナウイルス騒ぎの渦中で、ジョコ・ウィドド大統領(ジョコウィ)が「健康を保つ秘訣」として、「毎日、ジャムーを飲んでいる」と自身のVLOGで語って、話題になった。

 ジョコウィが公開したジャムーの材料は、クスリウコン(temulawak)、ウコン(kunyit)、ショウガ(jahe)。すりつぶすか小さく切って、お湯で煮出してから、漉したら出来上がり、と言う。

 そう言われても、分量などさっぱりわからないので、「+62インドネシア料理教室」講師のミニさんに聞いたところ、「私も毎日、ジャムーを飲んでいる」と言う。ミニさんのジャムーの材料は、クスリウコン、ウコン、ショウガ、レモングラス(serai)、シナモン(kayu manis)と、「ジョコウィ・レシピ」とほぼ同じ! 違いはシナモンとレモングラスが足されていることだ。

 「シナモンも体にいいんですよ。これは体を温めるジャムーで健康に良い。『ブラス・クンチュル』は風邪を予防したり生理の時に飲むジャムーですが、コロナ・ウイルス予防の免疫力アップには、こっちの方がいいと思います」とのことだ。


 外で売っているジャムーの中には、パウダーを溶かしただけの即席の物もあるので、家で手作りした方が良いと言う.



 「免疫力を上げるために!」と言うかけ声の下、ジャムーの作り方を教えてもらった。

 実の所、作り方はそんなに難しくない。材料を薄切りにして、ゆでるだけだ。材料はスーパーで売っているし、値段も安い。これは、さすがにインドネシアならでは。

 材料をゆで始めると、あっという間に、クスリウコンの赤、ウコンの黄色がグラグラ沸騰するお湯の中で競争するように混じり合い、水が暗赤色に変わる。ゆでているところを見ると、謎の液体だ。煮詰まって出来上がったジャムーは、濃くいれ過ぎた紅茶のように濁った赤色で、おいしそうにはとても見えない。

 しかし、「どれだけまずいか」と覚悟して飲むと、意外に「あれっ?」と拍子抜けする。ショウガの味と香りがすっと喉を通り抜け、さわやかな後口だ。「ベリーホット」でもない「マイルド」味程度のジンジャーキャンディーから砂糖を抜いたよう。ふわっとシナモンが香る。ショウガの辛さが口に残って、最後にちょっとだけ舌がピリピリする。ミニさんによると、飲んでいると、喉や胸が温かくなってきて気持ちが良いという。


 飲みにくい人はヤシ砂糖(gula merah)かはちみつを足したり、レモンやスダチ(jeruk nipis)を絞っても良い。しかし、このままでも十分に飲める味だ。私がこれまでジャムーを苦手としていたのは味が変に甘ったるいことだったので、砂糖抜きの方がむしろおいしいのではないかと思った。「これからのジャムーはシュガーレス!」を力説したい。

 このジャムー、朝起きてから、朝食の前に、コップ1/2〜1杯ほどの量を飲む。胃腸の強い人は、日に2回か3回、飲んでも構わない。喉がすっきりするし、インドネシアにいて試さない手はないと思う。


 詳しい作り方は、下記をどうぞ。

◎ジャムーの作り方

【材料(カップ6杯分)】

クスリウコン temulawak 100グラム

ウコン(ターメリック) kunyit 100グラム

ショウガ jahe 60グラム(※もしあれば、赤ショウガ=jahe merah=の方が良い)

シナモン kayu manis 15グラム

レモングラス serai 20グラム

右から時計回りに、レモングラス、シナモン、ショウガ、ウコン、クスリウコン




【作り方】

①クスリウコン、ウコン、ショウガはたわしでよく洗って土を落とす。皮をむき、薄切りにする。

②レモングラスは包丁の背で全体をたたく。

③鍋に水カップ6杯、①、②を入れ、火にかける。中火で、水の量が約半分に減るまで、30分〜1時間ほど煮る。

④粗熱を取ってから、漉す。

⑤鍋にもう一度、水カップ6杯を入れ、材料を戻して、水が約半分に減るまで煮る。

⑥粗熱を取ってから、漉す。2回、煮出した材料は捨てる。


※鍋は、もしあれば、土鍋の方が良い。

※冷蔵庫に入れて保管する。

チカラン日本人会 (CJC)

西ジャワ州ブカシ県チカランやカラワンに住む日本人の集い「チカラン日本人会」は2015年11月に発足。地域のさまざまな情報を交換し、問題を共有、解決を図る組織を目指していきます。

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