城田実さんコラム 第50回 中国漁船とEEZで緊迫 (Vol.129 2020年1月28日号メルマガより転載 ) 昨年12月に始まった中国漁船による北ナツナ海域EEZ(排他的経済水域)での違法操業は侵入と退去を繰り返していたが、今年に入って中国海警所属船舶と共に同海域にとどまり操業を継続する事態に発展した。インドネシア国軍は最終的に艦船8隻、F16戦闘機4機を投入するなど、中国艦船の違法行為を許さない強硬な姿勢を明確に示し、10日には大統領がナツナ県を訪問したのを契機に中国船舶はようやくEEZから退去した。ところがその後再び中国漁船の違法操業が再開され、北ナツナ海域での睨み合いは続いている。 中国漁船の違法操業が大きな関心を集めたのは2016年以来だが、この一連の事件で注意を引いたのは、国軍が一貫して毅然と中国公船に対峙したのに対し、中国...28Jan2020城田 実「インドネシア生々流転」
城田実さんコラム 第49回 過激思想防止への危惧 (Vol.125 2019年12月25日号メルマガより転載 )ティト・カルナフィアン (Tito Karnavian) 内務相 「過激思想が社会に浸透するのをどのように防ぐか」というテーマが第2期ジョコウィ政権の重要政治課題に浮上しているように見える。テレビの政治討論会でもしばしば取り上げられ政治家や専門家の間で賛否こもごもの熱い議論が交わされている。 ジョコウィ大統領は大統領再選後の最初の政策スピーチ(7月)で、20分ほどの短い挨拶の最後に演説時間の1/3ほどを使って、国民の団結と国家の一体性を訴え、国是5原則のパンチャシラを損なう動きに対しては容赦をしないと断固とした口調で決意を示していた。従って、過激思想が若者や公務員にまで広がっている現状を政府が深刻に受け止めているという認識は...01Jan2020城田 実「インドネシア生々流転」
城田実さんコラム 第48回 ジョコウィ内閣のヤジロベエ (Vol.124 2019年11月13日号メルマガより転載 ) 第2期ジョコウィ内閣の閣僚名簿を見ながら、あることないこと想像を巡らすのはなかなか面白い。数多くの評論があるので既に誰かが同じ感想を述べているかも知れないが、この内閣には沢山のヤジロベエが組み込まれていて、全体でなんとかバランスを保つような仕組みになっているではないかと想定してみると、想像力がさらに刺激される。本当はどうなのかはもとより知る由もないが、頭の体操にはなりそうだ。 組閣の最大の関心事はやはり、大統領選挙を争ったグリンドラ党との大連立はあるか、あるとしたらプラボウォ党首は入閣するか、であった。結局、プラボウォ氏が国防相として入閣したが、大統領選挙で接戦を演じた個性の強いプラボウォ氏が閣内に占める重みは非常に大きい...01Jan2020城田 実「インドネシア生々流転」
城田実さんコラム 第47回 パプアの差別事件から見えるもの。 (Vol.117 2019年9月16日号メルマガより転載 ) パプア出身の学生に対する差別事件に端を発する抗議運動は、政府系事務所の破壊と放火に加えて治安当局と市民の双方に死者を出す暴動にまで発展し、一部ではパプアの将来に関する住民投票を主張する運動も広がった。この一連の騒動に対する政府の対応には首を傾げたくなるものが少なくないが、「国際イスラムテロ組織のISIS(イスラム国)が騒動に便乗して政府を共通の敵にしようと画策している」という国防大臣発言(9月5日)には耳を疑った人が多かっただろう。 この大臣は、パプア在住者の85%がキリスト教徒で、10数%のイスラム教徒の多くも域外からの来訪ないし移住者なの...01Jan2020城田 実「インドネシア生々流転」