池田華子さん「インドネシアの丸かじり」第4回「ジャムーを丸かじり」ジャムー(jamu)と言うと、どんより濁った黄土色の液体が「きれいなんだか?」という瓶に詰められて、コップ売りされている情景が目に浮かぶ。色は、さまざまな種類の黄色や赤褐色、または濁った白。手作りジャムー入りの瓶を背負って売り歩くのは、「ヤクルトおばさん」ならぬ「ジャムーおばさん」だ。30Mar2020池田 華子「インドネシアの丸かじり」
城田実さんコ第51回 オムニバス法に見るジョコウィの思い。 (Vol.130 2020年2月13日号メルマガより転載 ) 多くの法律の規定が錯綜しているために、許認可手続きが煩雑化し省庁間や地方政府との調整だけでも膨大な時間を要するなど、投資や企業活動を大きく阻害している現状を一挙に打開しようと大統領がいま最も熱心に取り組んでいるのが「オムニバス法案」であろう。今年の国会では優先的な立法計画として50件の法案を決めたが、この中に4件のオムニバス法案が入った。この中で最も議論が盛り上がっている「労働市場創出に関するオムニバス法案」では、労働市場創出という大きな政策目標の下に、80件近い法律の千数百の条項が統廃合され、一つの法律に整理されることになると言われている。 ジョコウィ大統領は昨年の独立記念演説でオムニバス法の構想を打ち出していたが、大統領の...13Feb2020城田 実「インドネシア生々流転」
城田実さんコラム 第50回 中国漁船とEEZで緊迫 (Vol.129 2020年1月28日号メルマガより転載 ) 昨年12月に始まった中国漁船による北ナツナ海域EEZ(排他的経済水域)での違法操業は侵入と退去を繰り返していたが、今年に入って中国海警所属船舶と共に同海域にとどまり操業を継続する事態に発展した。インドネシア国軍は最終的に艦船8隻、F16戦闘機4機を投入するなど、中国艦船の違法行為を許さない強硬な姿勢を明確に示し、10日には大統領がナツナ県を訪問したのを契機に中国船舶はようやくEEZから退去した。ところがその後再び中国漁船の違法操業が再開され、北ナツナ海域での睨み合いは続いている。 中国漁船の違法操業が大きな関心を集めたのは2016年以来だが、この一連の事件で注意を引いたのは、国軍が一貫して毅然と中国公船に対峙したのに対し、中国...28Jan2020城田 実「インドネシア生々流転」
城田実さんコラム 第49回 過激思想防止への危惧 (Vol.125 2019年12月25日号メルマガより転載 )ティト・カルナフィアン (Tito Karnavian) 内務相 「過激思想が社会に浸透するのをどのように防ぐか」というテーマが第2期ジョコウィ政権の重要政治課題に浮上しているように見える。テレビの政治討論会でもしばしば取り上げられ政治家や専門家の間で賛否こもごもの熱い議論が交わされている。 ジョコウィ大統領は大統領再選後の最初の政策スピーチ(7月)で、20分ほどの短い挨拶の最後に演説時間の1/3ほどを使って、国民の団結と国家の一体性を訴え、国是5原則のパンチャシラを損なう動きに対しては容赦をしないと断固とした口調で決意を示していた。従って、過激思想が若者や公務員にまで広がっている現状を政府が深刻に受け止めているという認識は...01Jan2020城田 実「インドネシア生々流転」
城田実さんコラム 第48回 ジョコウィ内閣のヤジロベエ (Vol.124 2019年11月13日号メルマガより転載 ) 第2期ジョコウィ内閣の閣僚名簿を見ながら、あることないこと想像を巡らすのはなかなか面白い。数多くの評論があるので既に誰かが同じ感想を述べているかも知れないが、この内閣には沢山のヤジロベエが組み込まれていて、全体でなんとかバランスを保つような仕組みになっているではないかと想定してみると、想像力がさらに刺激される。本当はどうなのかはもとより知る由もないが、頭の体操にはなりそうだ。 組閣の最大の関心事はやはり、大統領選挙を争ったグリンドラ党との大連立はあるか、あるとしたらプラボウォ党首は入閣するか、であった。結局、プラボウォ氏が国防相として入閣したが、大統領選挙で接戦を演じた個性の強いプラボウォ氏が閣内に占める重みは非常に大きい...01Jan2020城田 実「インドネシア生々流転」
城田実さんコラム 第47回 パプアの差別事件から見えるもの。 (Vol.117 2019年9月16日号メルマガより転載 ) パプア出身の学生に対する差別事件に端を発する抗議運動は、政府系事務所の破壊と放火に加えて治安当局と市民の双方に死者を出す暴動にまで発展し、一部ではパプアの将来に関する住民投票を主張する運動も広がった。この一連の騒動に対する政府の対応には首を傾げたくなるものが少なくないが、「国際イスラムテロ組織のISIS(イスラム国)が騒動に便乗して政府を共通の敵にしようと画策している」という国防大臣発言(9月5日)には耳を疑った人が多かっただろう。 この大臣は、パプア在住者の85%がキリスト教徒で、10数%のイスラム教徒の多くも域外からの来訪ないし移住者なの...01Jan2020城田 実「インドネシア生々流転」
生島尚美さんエッセイ / 新・バリ一代ドタバタ記 (メルマガvol. 93 2019年3月5日号より転載)第16回 とんでもなかった、当日。Plagaよ、走れ!と叫びまくりですわ。07Sep2019生島 尚美「バリ島一代ドタバタ記」
城田実さんコラム 第46回 今なぜ国策大綱を復活させたいのか? (Vol.114 2019年8月27日号メルマガより転載 ) 「GBHN」と聞いて直ぐにピンと来る人はかなりインドネシア経験が長い方かも知れない。日本語では「国策大綱」と訳されている。インドネシアの歴史に「開発の時代」を始めてもたらしたスハルト政権は開発独裁と呼ばれたが、スハルト大統領は決して独裁者ではなく民主的な指導者なのだという主張のカギはこの「国策大綱」にあったと言えよう。スハルト時代でも憲法は主権が国民に存すると定めているから、ポイントは国民の意志で政治が動いていたかどうかということになる。国家の最高機関である国民協議会が、主権者である国民の意を体して、大統領が任期中に果たすべき国政の基本指針として策定したのがスハルト体制下の「国策大綱」であった...27Aug2019城田 実「インドネシア生々流転」
城田実さんコラム 第45回 社会の変容とパンチャシラ(Vol.109 2019年7月23日号メルマガより転載 ) コンパス紙の世論調査によると、今年の大統領選挙は「前回よりもみにくい選挙戦だった」と答えた人が6割、選挙後に最も緊急に取り組むべき課題として8割以上の人が「選挙で分断された社会の修復」を挙げたそうである。ジャカルタ知事選挙の最中には、アホック候補を支持した人の葬儀が、反アホックの住民が圧倒的に多いモスクで拒否されたことがあった。冠婚葬祭を大事にするこの国では驚くばかりの出来事だったが、選挙の傷跡はいまどのような状態になっているのだろうか。 インドネシアでは、コミュニティーは融和が第一、対人関係でも決して物事をあらげないことが最大の美徳だと教えられた。個人的な限られた経験ではあるが、実際に周りのインドネシア人が隣近所との付き合いを大...23Jul2019城田 実「インドネシア生々流転」
城田実さんコラム 第44回 暴動と国軍、政治の関係 (Vol.105 2019年6月17日号メルマガより転載 ) 大統領選挙結果の発表を契機にして発生した暴動は、いくつもの波紋と様々な憶測を生んでいる。波紋の一つは、選挙結果への抗議デモを意図的に暴動に発展させ、その混乱の中でデモ参加者を計画的に射殺した上で、これを警察の仕業に仕立てて政府を追求する大規模な騒乱状態を作り上げようとする計画が摘発されたというものだった。ティト警察長官は、容疑者から押収した小銃を記者会見で示しながら、容疑者の供述や関係者の証言および物証が揃っていると立件に自信を示した。 ティト長官の記者会見を聞いて、かつてスハルト政権の崩壊やスカルノ大統領の失脚の契機となった大規模デモが、デモ参加者に死者が出たことで騒乱状態、さらには政変への大きなエネルギーが生まれる一つのきっか...17Jun2019城田 実「インドネシア生々流転」
城田実さんコラム 第43回 ジョコウィを後押しするものは何か? (Vo.102 2019年5月21日号メルマガより転載 ) 大統領選挙の開票作業は5月15日時点で全国34州のうち26州で集計が完了したと報じられた。最終的な選挙結果の発表が早まる可能性も出ているらしい。しかしプラボウォ陣営が選挙プロセスの不正を理由に開票結果を拒否する姿勢を強めているので、選挙をめぐる緊張はまだ続きそうな気配である。そんな中、政界では早くも組閣あるいは改造に向けた各党の動きやそれに伴うさまざまな憶測が盛んになっている。 そうした動きが顕在化した直接的なきっかけは、プラボウォ陣営に属する2政党の代表がジョコウィ大統領と会談したことと、汚職事件で取り調べを受けている閣僚3人が容疑者とされる公算が高まっていることだろう。 選挙速報がジョコウィ候補の事実上の勝利を報じてから間もな...21May2019城田 実「インドネシア生々流転」
城田実さんコラム 第42回 5年後の世代交代にスコープ (Vol.99 2019年4月22日号メルマガより転載 ) 大統領選挙は大方の予想通りジョコウィ候補が再選を果たすことが確実になったようだ。現職の続投となったので安心感はある。インフラ整備と規制緩和の推進でインドネシア経済を強化してきた政府の基本政策が第2段階に入り、選挙戦でも指摘された政策の是正や新たな国際環境への対応などの課題に取り組みながらジョコウィ政権10年のミッション完遂に向かうことになる。 今年の大統領選挙は、同じ候補の争いだった前回と比べても非常に激しい戦いだったと多くの関係者が述べている。議会議員選挙との同日選挙だったことや、選挙期間が約7カ月という長期戦だったという事情もあったかもしれない。にせ情報や非難中傷が異常に氾濫したことも激しさを印象付けた。そのあおりを食ったかの...22Apr2019城田 実「インドネシア生々流転」